お盆

「お盆はよく分からないけど、みんな集まるから田舎に帰る。」「お坊さんがなぜかやってきてお経を上げていく。」という方が増えているようです。
お盆は父母や先祖への孝行を思う行事です。
先祖や父母のことを思う孝行の美徳が薄れる現代ではありますが、人がいれば必ず親がおり先祖がおります。その方たちの思いを考えてみれば、自分の行いを律する機縁になるのではないでしょうか。
そこで、ここではお盆が何かを説明させていただきます。

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お盆とは

お盆とは「盂蘭盆うらぼん」を略した言葉です。これは、昔のインドの言葉で「ウランバナ」の音写語で、「倒懸とうけん」つまり「さかさまにぶら下げられる苦しみ」を表します。これは、餓鬼道(餓鬼の世界)に落ちた者たちの苦しみは「さかさまにぶら下げられる苦しみ」のようだということです。つまりお盆とは、餓鬼道の苦しみのことです。

(また、一説にはイラン語の「霊魂」を意味する「ウルヴァン」から来たとも)

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餓鬼とは

餓鬼とは、昔のインドの言葉で「プレータ」からきたといわれ、原義は「去ったもの」といわれます。つまり、餓鬼とは「死霊」もしくは「社会からはじきだされた過酷な悲惨な立場の人々」のことです。
そして特に、自分の所有物をおしみ(けん)他人の所有物を貪った(どん)罪により餓鬼道に落ち、飢餓に苦しみ子孫の供物を待つ供養されない死霊のこととされます。

餓鬼道の苦しみは、「さかさまにぶら下げられる苦しみ」といわれる非常な苦しみです。

お盆のお話

昔々、お釈迦様の弟子に目連尊者という方がおられました。目連尊者は「神通第一」と呼ばれるほど神通力(超能力)に優れたお釈迦様の高弟です。
目連尊者は、父母を成仏に導き育ての恩に報いようと神通力で父母を見通し、母親が餓鬼道に落ちていることを知り、お釈迦様に母親を助けたいと願います。
するとお釈迦様は、
「汝の母は罪が深く、汝一人の力でどうにもしがたいが、多くの僧と神の力を以てすれば成仏できる。7月15日の僧自恣そうじしの日(雨季の修行(夏安居)を終えた次の日)に、僧侶たちに飲食を供養すれば、その功徳で母親を助ける事ができるだろう。」と、おっしゃいました。
目連尊者は、さっそく「盂蘭盆会うらぼんえ」を行い、修行明けの僧侶たちに飲食を供養し、母親を餓鬼道から救うことができたのです。
そしてお釈迦様は、未来においても父母に孝行を行ずる仏弟子は、盂蘭盆うらぼんにより父母や七世の父母を救すべし、と告げられました。

この仏教の救母説話(『仏説盂蘭盆経』要約)に、もともとインドにあった亡者供養の行事が結びつくとともに、日本古来からのお正月と年の半分が過ぎた時季にご先祖様の霊が家に帰ってくるという風習、さらに野菜・果物などの収穫祭が合わさり、お盆はご先祖さまを家にお招きしてゆっくり孝行に励むとともに、収穫した野菜などを供え、お坊さんを家に招きもてなし、お棚経たなぎょうをあげてもらう行事になったのです。
お棚経は、家に住みついた餓鬼にも食事などを与え供養し成仏させ、その功徳をご先祖さまの霊に廻向えこうします。

また、お正月とお盆は祖霊が帰ってくるといいますが、お正月は将 来を語り、お盆は昔を思い出すものです。現在を生きる人が、 一年の内に未来と過去を語る。これで、過去・現在・ 未来が一つにつながりますね。

生身魂いくみたま

お盆は、父母先祖への「追恩・孝行」を象徴する仏教行事です。孝行の行事ですので、死霊に供養する行事に止まらず「生身魂いくみたま」といって、生きてい る両親にも孝行する必要があります。
特に、一年間に新霊のなく一族が健康に迎えられためでたい静かな盆を「生盆いくぼん」などともいい、お土産を持って実家に帰り、父母に孝行をします。

東京のお盆は7月

蒸し暑い日が続く東京の7月。暑い中、着物のお坊さんがバイクで回っているのを見かけたことはありませんか?地方では8月15日ごろが多いお盆ですが、東京では7月15日ごろがお盆です。

主にお盆には3つの時期があるようです。
①千手院で「東京盆」と呼んでいる新暦の7月
②「旧盆」と呼ばれている旧暦の7月
③「月遅れ盆」と呼ばれる新暦の8月

理由を少し考えてみます。
東京盆が7月になった考えられる理由は、
「江戸っ子は7月まで待てなかったから」
もともとお盆は、旧暦の7月15日ごろに行われていました。しかし明治時代、新暦が採用されたとき、旧暦の7月15日を江戸っ子は待ちきれず、新暦の7月にお盆をおこなったんではないでしょうか。
また新暦を押し付けた明治政府のお膝元だったせいもあるでしょう。

なぜ、地方の人々がそれに追随しなかったのか?よくいわれるのは
「新暦七月は農作業が忙しかったから」だといいます。

また、東京と地方の時期違いが定着した理由を考えてみますと、「東京にいる親戚と、地方の親戚が集まりやすいから」ではないでしょうか。
これは今でも、なかなか会えない離れた親戚同士が会える数少ない機会になっています。

もう一つは、「東京のお坊さんと地方のお坊さんが助け合いやすいから」
お寺が一番忙しいこの時期に、時期をずらすことによって、東京・地方のお寺が助け合うことができるんです。画期的ですよね(笑)

ところで、なぜ地方では旧暦の7月15日でなく、毎年新暦8月15日にお盆を行うのか?
これは新暦を使い始めると、旧暦の7月15日が新暦では何日にあたるのか分からなくなってしまうため、またお釈迦様のおっしゃった15日というのに意味を感じ、8月15日ごろに定着したともいわれます。

お盆の期間

お盆の期間は地域によって違いがあります。
「お盆のお話」に出てきた通り、お釈迦様のおっしゃられた「僧自恣そうじし」の日は7月15日です。
インドでは、夏の雨が多く毒虫も多い時期に僧侶は外出せずに静かに講学瞑想をする夏安居あんごを4月15日からの90日間に渡って行っていたそうです。これが終わるのが7月14日でした。そして、無事に修行が終わった次の日の、7月15日は自分のほしいままに休むことから「僧自恣そうじし」の日といいます。この日は、修行が成満じょうまんした僧侶がたくさん生まれた歓喜の日ですので、信徒たちは僧侶に供養を行ったのです。ですから、お盆の日は7月14日から15日(あるいは8月14日から15日)としている地域もあるそうです。
また、この準備の日である13日もお盆に含める地域が多く、千手院でも7月13日から15日としています。
さらに7月1日(または8月1日)に地獄の窯が開くという話や、推古天皇以来お盆に先立って1日に尽孝の宣旨が出されていたという伝承があり、1日よりお盆準備行事が始まる地域があります。また7日の七夕以後とする地域もあるようです。
送りのお盆の最終日は、京都の大文字焼きで有名なように16日とするところもあるようです。

尽孝の宣旨

推古天皇以来、7月1日にお盆に先立って尽孝の宣旨が出されていたといわれています。
なぜかといえば、親が亡くなってからも孝行を尽くすことが真の孝行であり、もし貧しくても1日から15日まで慎んで少しずつお金や食べ物を蓄えれば、お盆にお供えすることができるからだそうです。
亡くなった親を思い、生きる者が正しく生きていく。こういった思いは、現代人には分かりにくくなっているのかもしれません。

江戸時代の本に、引用されている宣旨を載せておきます。
「人生きたる父母の苦難を救うは、これ常なり。死して鬼となるその苦患を救はずんば、あに孝を尽くすといはんや。聖人といえども未だ詳びらかに鬼神の境界(様子・状況)を知らず。今幸いに真聖(仏)大聖の説を得たり。神代黄泉のことに違わず。故に是を国々に告げ、万民をして孝道を起こさしむ。生ける時の孝は、父の威を恐れるが故に真の孝にあらず。死して後に孝を尽くさずんば何を以ってか真とせん。朔日(7月1日)にこれを告ぐることは、兼ねて自恣の日(7月15日)を悦んで、貧者は朝な朝な一文を蓄え、夕な夕な一升を設けて、これを盆供の営みにあてしめ、其の心を孝とす。死せる親を憐みて、生ける己が罪を慎む、其の心を道とする。」

お盆の過ごし方

ご先祖様が家に帰ってこられるお盆、せっかくなら気持ちよくお迎えしたいものですが、お迎えの仕方はお住みの地域や家によって違って分かりにくいものです。
 そこで、今回は千手院でご紹介しているお盆のすごし方を説明させていただき参考にしていただこうと思います。

<お迎えの準備>
お盆の準備は、地域や家ごとに沢山の違いがあると思います。
しかし、基本的に
①ご先祖様がお帰りになりくつろがれる準備をする。
②餓鬼道に落ちた人々を救う準備をする。

の、2点を目的にしています。
餓鬼道に落ちた人々を救うのは、餓鬼道に落ちたご先祖様を救い出すのはもちろん、ご先祖様ととものにやってきた餓鬼や、家に住み着いた餓鬼など、他の多くの餓鬼を救い、その功徳をご先祖様に廻向するためです。

◎掃除
お盆の準備は、七夕の日からはじまると言われます。
まずは、七夕の日ごろから、ご先祖様をお迎えし気持ちよくすごしていただくために家の中をキレイに片付けておきましょう。
お仏壇の周りや、お盆棚・精霊棚を飾る周辺は、念入りに掃除しましょう。

①ムシロを敷く。
お仏壇前に台を出して、まこものムシロを敷くお盆の時季になると、スーパーなどで「まこものムシロ」が売られていると思います。これをまずは仏壇の前に出した台などの上に敷いておきます。

②仏様とお位牌を中央奥に収める。
ムシロの中央奥に仏様を置き、その前にお位牌を置きます。

③竹や季節のお花、盆燈籠を飾る。
竹や美しい季節のお花、燈籠を飾る。
竹や季節のお花が、帰ってこられたご先祖様のヤドリ木になるとも言われます。

⑤ミソハギと水を供える。
飢えた餓鬼たちのために、お皿に蓮の葉(里芋の葉・フキの葉などでも良い)を敷き、その中に水を入れ、ミソハギという植物を紐(紙縒り)で束ねて入れます。お盆で供養される餓鬼というのは、ノドが狭くご飯を食べられないといわれていますので、お水でご飯を通りやすくします。ミソハギには、ノドの渇きを抑える作用があるといわれています。
棚経に来た僧侶は、ミソハギを使ってお供物をお浄めします。
蓮の花やミソハギが用意できなければ、コップの水だけでも構いません。

⑥水の子を供える。
洗ったお米に、キュウリやナスを賽の目に切ったものを混ぜ、蓮の葉(里芋の葉・フキの葉などでも良い)を敷いた皿に盛ります。
水の子は、ノドが狭く食べ物が入らないと言われる餓鬼たちに、少しでも食べやすくするために考えられたのでしょう。

⑦お膳、お水・お茶を供える。
ご先祖様に食べていただくご飯などのお膳を上げましょう。炊きたてのご飯を一番にお供えするだけでもかまいません。
お水・お茶もお上げしましょう。

⑥ろうそく、お線香を上げましょう。
火を扱うときは十分にお気をつけください。拝んでいない時は、火は消すようにしましょう。

<お迎え>
◎お墓にお迎えに行く。

家族全員または代表者でお墓にお迎えに行きます。
7月13日にお迎えに行くのが本来といわれますが、13日にはお墓まで行けないという方もいらっしゃるでしょうから、千手院では七夕からなら、お迎えにいらっしゃってもかまわないでしょうとご説明させていただいております。
精霊は迷いやすいといわれておりますので、お帰りは寄り道などせずにお帰り下さい。
また、お盆では他の家のお墓にお参りすると、そのお墓の精霊も一緒に連れて帰ってしまうことになりますので、ご自分の家のお墓だけをお参りするようにしましょう。

◎迎え火を焚く。
迎え火をする時刻は、12日に行ったり、13日の夕方に行うなど一定しません。
素焼きのお皿に、新聞紙などの着火物を置き、おがら(お盆の時季にスーパーで売っています。)を乗せて火をつけます。
火が収まってきたら、火傷に気をつけて、火をまたいで家に入ります。
集合住宅などでは、火を焚いても大丈夫か確認し、バケツなどに水を用意し火事に十分注意しましょう。

◎お仏壇(お盆棚)にお参りする。
いらっしゃったご先祖様をお仏壇(お盆棚・精霊棚しょうりょうだな)にお迎えしてゆっくり過ごしていただきます。

<ゆっくり過ごし、ご供養する。>
◎ご供養をする。

昔からお盆の故実にならい、お盆には家に僧侶を招き、お仏壇(お盆棚・精霊棚)の前でお棚経(たなぎょう)をあげてもらいます。
お棚経は、ご先祖さまとともについてきた餓鬼(供養を受けられない霊)や、家に住み着いた餓鬼にも食事などを与え供養し成仏させ、その功徳をご先祖さまの霊に廻向するものです。
ご自宅で僧侶のお棚経をご希望の方は、千手院にご連絡ください。
お寺でも、合同のお盆供養会を行っておりますのでお問い合わせ下さい。

◎ご家族、ご親戚などと楽しくお過ごし下さい。
お盆の期間中は、精霊はお墓から家に帰られておりますので、親戚の方々は精霊のお帰りになったお家にお参りください。(お盆の中日にお墓にお参りする習慣のある地域も一部あるようです。)

盆踊りは、もともとはお盆の夜に開かれて、帰ってきた精霊たちを慰めたそうです。

<お送り>
◎お仏壇(お盆棚)にお参りする。

お送りする前に、ご先祖様にご挨拶しておきます。

◎送り火を焚く。
迎え火と同様に火を焚き、火をまたいで家を出ます。
お送りの時間も、お迎えの時間と同様一定しません。15日にされるようご説明しておりますが、最近は16日にされる方も多いようです。

◎お墓までお送りする。
お墓に向かう際は、精霊が迷わないように寄り道をしないようにお墓までお送り下さい。

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