疫病神

新型コロナウィルスによるご不幸に合われた方々のご心痛、罹患された方々のご心労はいかばかりかと察するばかりです。また、新型コロナウィルスのニュースが日々流れる中で、疫病への恐れや、孤独を強く感じておられる方も多くいらっしゃるようです。

これらの不安な思いや、これまでにない苦しい立場に置かれたことによるストレスは、様々な形で問題となって表出してきているようです。

そこで、数々の疫病に襲われた昔の人々が疫病神(やくびょうがみ)についてどう考えていたかを知り、今の苦しい状況に生かすヒントを得たいと思います。

『仏説却温黄神咒経(ぶっせつきゃくおんおうじんじゅきょう)』に登場する疫病神である摩怛利神(またりじん・七摩怛利)は、七母女天(しちもにょてん)と訳されます。名前の通り、多くの鬼たちを産む七柱の姉妹の神々です。

七母女天は、悪魔の鉤で人々や動物たちを召し寄せ【鉤召】、死地にとり入れ【摂入】、その生命を奪い【能殺】、その血を飲み、肉を食べ本望を成就【能成】する、といいます。

一方、この七母女天が仏道に帰依し善神となると、金剛の鉤で人々や動物たちを召し寄せ【鉤召】、救いの教えにとり入れ【摂入】、人々や動物に危害を加える者の不善な心を殺害して【能殺】、人々を世間の苦しみから離れた平安な境地に渡す誓願を成就【能成】するといいます。

つまり、人々を死地に追いやる技術を一転、人々を平安な世界に導く技術に善用するというのです。

昔の人々は、疫病という災いを転じて福となすことを願い、お経にして祈り、不安な思いやストレスを希望に変えて、疫病を乗り越えて、現代に続くより善い社会を作り上げてきたのです。

現代の我々も不安な思いやストレスを一転させ希望に変え、長引くコロナ禍の期間を後世に残すより善い社会創りを考えてみる機会にしてはいかがでしょうか。

ちなみに七母女天は、闘戦の神である大黒天と同体とされ、疫病避けとして大黒天を祀るお札が貼られることがあります。日本では大黒天といえば財福の神です。疫病神が、一転して財福の神の大黒天に変わるのです。面白いですね。

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